石のひとりごと

停年退職してもう12年,頭が白くなりました.

「氷山の一角」は本当か?

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20年余り前の岩波科学にRJ.Geller氏が「氷山の一角」という文書を出されて、研究の進歩の大半を担うのは研究者氷山の海面上に出た1割の人達であり、それらの研究環境を良くする必要を説いていた。この文章は院生にも有用な内容を含むので学生に読ませて感想を聞くことがあるが、本当に1割の人が重要なのかどうか、どうして論証できるか、また分野は入れ替わるので、昔氷山の底だった分野が氷山がひっくり返って海面上へ出ることもある、等々面白い意見が出される。Web of Scienceのデータでどのように扱えるかと思い、2つ図を作成してみた。total citationについては異論もあるだろうが、影響力の目安として使う。個人別の論文のCitationとその積算人数をプロットした一つ目の図では、以前に示したように対数正規分布に近い。両対数で作図すると冪の関係は示さないで高citationの部分で勾配は1よりも小さい。このことは極端に高citationの人々が全体を支配しているのではないことを示唆している。もう一つの図は、データのある255人分を高citationから10等分してそれぞれのクラスの総citation数を全体で割ったものを作成した。この一番左側がTop10%の研究者の全体のcitationに占める割合を示したもので48.4%である。つまり日本の地球惑星科学研究者の出す成果の半分近くはTop10%の研究者の論文によるものであることになる。実際には共著が全部入っているので、単純に判断はできないが、二番目の図は、「氷山の一角」説を裏付けるように思える。昔、丸山工作著「生化学の黄金時代」のP.9の表のデータをプロットして被引用度と論文数に冪の関係(途中で1回折れ曲がる)があり、そんなものかと思っていたが、時代が変わってきたのか、分野によるのか、冪にはならなかったが、「氷山の一角」的な考え方は本当なのだろうか。