山田風太郎『人間臨終図巻』を少しずつ読んでいて、
シーボルトの項で、この本の存在を知り入手して読んでみた。
発刊された1992年度「
本の雑誌」ベストワン、とのことで、確かに新たに著者により発掘されたオランダの資料による、いわゆる
シーボルト事件の中身、裏、奥について描かれていて、大変面白かった。
ほぼ
鎖国で、長崎の出島を通して海外の情報を得たい幕府と、日本の実情や情報が欲しいオランダが、解っていながら
シーボルトを介して禁制の地図や図面、文献を互いに秘密裏に流していたのは、成る程と思ったが、最後の事件の裏話になる、
薩摩藩と幕府の確執の話は、その方面の知識に乏しい者には少し唐突に感じられた。
若き日の
シーボルトの能力の高さ、人間的な魅力もこの本を読むと印象深い。