石のひとりごと

停年退職してもう12年,頭が白くなりました.

半藤一利『清張さんと司馬さん』

『昭和史』を買って最初の部分を読んで面白いけどそのままにしている半藤さん。表題の本を市立図書館で見つけて、読み出したら面白くて、寝る前を使って数日で読んだ。

松本清張は昔から好きでよく読んだが50冊程度なので全体の1/10程度。司馬遼太郎も最近は、空海の風景、なぞ筆の冴えに感嘆した処。

で、そのお二人の編集担当をしていた半藤さんのこの本が面白く無いはずが無い。先見性と合理性を持った主人公を歴史の中に置いて俯瞰的に描く司馬遼太郎と、クソリアリズムで庶民の目から現実を多量の小説やノンフィクションに描いた松本清張を、交互に、あるいは比較しながら描いているが、両者共、取材に莫大な労力をかけていたことが記されている。

まだ読んでいない作品の裏話などや、意図が書かれており、読んでみたくなる。また、両作家の資料読み込みの集中力の凄さの記述は印象に残る。

それにしても日本の昭和の代表的な作家である二人。どうしても、日本がなぜ太平洋戦争に走ったか、についても記されているのだが、司馬遼太郎が、満州事変から終戦までを日本の歴史の異常時のように捉えていたというのは意外だった。日本国民はそう変わっていないと思うのだが。

手許に置いておきたくてアマゾンでポチ。

ps 途中で紹介のあった、松本清張文芸春秋社担当を長くされた藤井康栄『松本清張の残像』文春新書を借りて見ているが、その製作過程や人柄が書かれていて面白い。