石のひとりごと

停年退職してもう12年,頭が白くなりました.

新田次郎「昭和新山」「小説に書けなかった自伝」「桜島」

新田次郎は大学時代に良く読んでいた記憶がある.「孤高の人」とか,「白い手帳」などなど.

FBで1月位前に三松正夫の娘婿の三松三朗さんが書いておられたので,図書館で新田次郎著「昭和新山」を借りて読んでみた.実際に忠実に書かれていて,戦時下で情報統制がされる中,正夫が昭和新山の記録を残すために私財を投じて努力したことが坦々と書かれていた.私も駆け出しの1970年代に札幌の学会の後,樽前・有珠の巡検に参加して三松正夫さんにお目にかかったことがあった.

気になって検索したら,新田次郎に「小説に書けなかった自伝」というのがあったので,それも図書館で今日借りて,読みだしたら面白くて半日で読んだ.裏話というのは,表の作品とは違った面白さがあるものだ.新田次郎藤原てい藤原正彦,と個性の強い家族がぶつかり合う様子.一方で気象庁の測器課の職員として勤めながら,ひょんなことから小説を書くようになり,ただ小説家として食っていく自信がなかなかできず,最後は富士山の気象レーダー設置を花道に退職して文筆生活に入る過程.長く読まれる作品は十分推敲した作品であることだが,売れ行きは必ずしも対応しないこと,などなど.

この自伝を読んでいて,「桜島」は現地で取材し,そこに居る間に書き終えたことが書かれてあったので,ちょうど借りていた全集10巻の末尾にあったものを読んでみた.名前は替えてあるが,大正噴火の時の測候所の次男が出てきて,主役は京大桜島観測所の助手ではあるが,地元の人達との交流を描きながら,自然現象の予測の難しさについて書かれている.改めて京大防災研桜島火山研究センターの歴史を見て,佐々教授以下の歴史を思った次第.