石のひとりごと

停年退職してもう12年,頭が白くなりました.

よしなごと

もう退職して8年が過ぎましたが,まだ時々大学図書館へ行ったりして過ごしています.今日見ると,自民党から国立大学の規模縮小が云われていて,日本の経済がこれから厳しくなるのを受けて削れる処を削ろうという動きかと思いました.科研費の使い方についてもSNSを見ていると内実を全然知らない人からの発言が多いようです.多分,今の日本の政治家で卒論ででも研究らしいことをしたことのある人は1割居ないのでは,と思ったりします.国民全体ではもっと少ないでしょう.

理系の研究だと,大まかなテーマを決めたら,それに関する文献(大半は学術雑誌に掲載されている論文)を読んで,何処まで判っていて何が問題になりうるかを調べ,実験計画を立てて,時間をかけて調査・実験でデータを出し,それから新たに云えることを纏めて学会発表,論文投稿をして,査読を経てうまくいけば,論文発表に漕ぎ着ける訳です.

優秀な研究者はやったことは全部論文にしているでしょうが,私は2-3割程度しか論文発表できず,出せなかったデータは死蔵です.論文として発表できるためには,一まとめのデータが完全に揃いその内容に新規性が必要ですが,そこが甘いと出せないデータがたまってしまう.完全になるまで出せば良いじゃないと云われるのでしょうが,タイミングと勢いがないとできなかったのでした.データが揃っても結論が凡庸だと査読を経て発表するのは容易でないことがしばしばです.論文は殆どが検索(例えばGoogleScholar等)を使えば拾えます.最近は直接pdfをDLできる場合が多くなりました.

科研費はそのサイトへ行けば,研究者全てについて,データベースが公開されているので見れます. https://kaken.nii.ac.jp/index/ 私は40年近くやって,10回余り筆頭として科研費等を受け,科技庁の予算等も入れると総額1億位になりました.査読付き総論文数は54で,うち国際誌論文は27ですから1本当たりの費用としては普通だろうと思います.活発な研究者は総額10億以上貰うでしょうし,論文が少ないとあまり科研費が廻らない人もいます.申請の25%位が当たるのですが,実際には,2-4年の継続の申請をするので,全然貰えない人は1,2割だろうと思われます.

研究費のうちで旅費(調査,学会参加)とか消耗品,機器使用料,等は必須ですが,科研費で年間150万程度は欲しい処です(学生の調査旅費,設備利用料等も考えると).でも大きな機器を開発・購入したい場合は,大きな科研費が必要です.私の場合は,一般Aを一回だけ貰いガス圧装置を購入しましたが,その4年間は費用の使途に振り回された感じでした.つまりそれより大きな研究費を申請する能力はない,ということがバレバレでした.Sとか特別推進とか数億の予算を何度も受けている研究者はそれだけ能力が高い.(研究だけでなく,教育,マネージメント等の総合的な力)

これからも世界のリーダーになる国は科学技術のレベルをトップに保つ必要があるでしょうが,日本は残念ながら今の状況では,その重要さを理解する人がトップを含め国民全体として弱いように思われます.既に論文数等で落ち目になっているのが益々たいへんな状況になるような感じがします.若い有能な人達が興味を持ってその能力を発揮できる場所が狭くなってきているように思えるのは残念な処です.