石のひとりごと

停年退職してもう12年,頭が白くなりました.

「大学院生物語」文芸社

大きな本屋に置いてなく,結局Amazonで入手しました.

読んでみて,これは一寸特殊な「大学院生物語」のような気もします.旧国立研究所での研究室の日常が描かれていますが,研究テーマが理事長から出されて,研究員の著者が請け負った大学院生に実験の手ほどきから論文書きまでを手取り足とりして指導して業績をあげていく様子で,最後の論文公表も理事長の許可が必要とのこと.ということは著者に理事長も入っているのでしょう.恐らく理事長さんは若い頃から学会の主流で活躍された後にこの研究所の理事長になっているのでしょう.でもある意味,すごく封建的なシステムに思えました.

登場する大学院生というのは医者の卵で,2年あるいは3年の在籍期間内に論文を書いて学位を取得するために居るので,効率は自然と高くならざるを得ない.昔,大学で教員の腐敗ぶりを見てそこへは未練なく研究所にハマった著者は,大学の公募へ応募されることはないのでしょうね.

そういう点で,普通の大学の院生とはちょっと異なる環境の大学院生物語であり,その指導物語であるように思いました.でもそのような位置で仕事をされることが好きなのだろうと思いました.100本以上の良質の論文を書かれていれば,多分公募に応募して研究室を主宰されることは可能なのでしょうが.

海野君が実験データに新しい現象を見つけて,新たな展開で研究がグングン進んで至福の時を味わうくだりは,まあ,こんなことやっている人は大半それが忘れられなくてやっているように思い共感を覚えました.