石のひとりごと

停年退職してもう12年,頭が白くなりました.

映画「グスコーブドリの伝記」

昨年公開された映画「グスコーブドリの伝記」をDVDで見た。

当時いろいろ地学関係者の意見を見ていたが、全体としては原作の伝えようとしていた内容をよく反映していて、良く出来ている印象だ。

最初の部分、子供の頃の一家の幸せな暮らしを丁寧に描いているのは良かった。原作(手許にないので確認できないが)ではこの部分はあまり印象に残らないくらいさらっと書いてあったように思うが、よく描き込んだアニメで楽しめた。

その後飢饉がやってきて両親が家を出て、ネリもさらわれていってしまう。ブドリは幻覚の世界(てぐす工場)と現実(農家)を行ったり来たりしながら、農家が行き詰まって、結局街(原作ー私は盛岡をイメージしたーより随分大きな街ー多分仙台か東京)へ出て、大学でクーボー博士の講義を聴く。クーボー博士の紹介で火山局(日本でも火山研究所が出来たらこの程度の規模?)で働くことになり、ペンネン所長や多くの職員と共に研究・観測に取り組む。

サンムトリ火山が膨張して地震が起き、麓の街が危機にさらされた時は爆薬で南の海側に溶岩を流して街を守ることができた。斜面を流れ下る溶岩流の映像は秀逸だ。火山の地形はいかさない(浸食され過ぎ)が、スフリエール火山を思い出すようなセッテイングだった。

そのうちに、また天候不順がやってきて、というあたりは原作と同じ、だが、やはり噴火を予知したり制御することは難しい。ペンネン所長曰く「観測することはできても予測することは実に困難だ」。どうも現実の噴火予知連の独白のような・・・

結局、ブドリが犠牲になってカルボナード火山を噴火させ、大気に多量のCO2を放出させて温かな気候を取り戻させることに成功する。昔のブドリ・ネリの悲しい思い出を若い世代にさせることなく最後はオフコースの曲「生まれ来る子供たちのために」で終わる。

途中、街の交通機関(飛行物体が多い)等、ちょっと違和感を感じる部分もあったが、アニメが丁寧に作られているのでそう気にならなかった。最後の部分を見ると、このアニメ制作は手塚プロの監修ではあるが、実際の原版作りは中国で行われているのに驚いた。日本で作られるアニメよりも精緻な感じがした(あまりアニメの世界は知りませんが)。