石のひとりごと

停年退職してもう12年,頭が白くなりました.

素九鬼子「冥土の季節」幻冬舎,2015年12月

今日,市立図書館で返却棚にあったのをひょいと取り出してみた.

タイトルも,著者名も,挿絵も,本の体裁も,少し変わっていて引かれるものがあり借り出した.

100ページ余りで活字も大きいし,あっという間に読んでしまった.

93歳の元気な老婆が,四国を,遍路というわけではなく,放浪していく話.若い人,老人,子供がからんできて,それぞれが短い物語をつないでいく.それらの中では,2番目の「野辺のがいこつ」の話が印象的だった.ふくらみのある話で,凄い腕と思ったのだが,後はそれほどでもなかった.最後は静かに冥土入りしていく.四国遍路の本は多いが,この本はある意味では神髄を書いているような気もした.

著者自身は現在79歳.若い頃,「旅の重さ」という作品で作家になった.この処女作品も少女が四国の旅に出て成長していく話のようだが,原稿をある作家に送ったのだがそのままになっていた.その作家が亡くなって原稿が見いだされ,刊行されてベストセラーになったとのこと.別の作品で直木賞候補にも3回なったが,受賞はならず.執筆を停止していたが,最近になって,この「冥土の季節」を出版した.作家にもいろんな人が居る.