石のひとりごと

停年退職してもう12年,頭が白くなりました.

事業仕分け

政権が替って,その斬新さを示すには今回の事業仕分けはなかなかインパクトを感じる.ただ,科学技術予算の仕分けについては,民主党のその方面の理解の乏しさが露呈した感じがする.首相を始め主だった閣僚が理系だったはずなのに,科学技術が日本の今後にとって必須であることを認識している人が今回の政権には居ないことが示されたと思う.今回は行政刷新会議の「事業仕分け」であるが,結局はその人選が結果を決める.

競争的資金(先端研究,若手研究者育成,外国人研究者招聘,等)の縮減が提案されているが,一方で国立大学法人などの運営交付金の減少を止めるのであろうか.「何が得られてきたか検証する必要がある.定量的に説明」とあるが,是非それを説得的に行うべきであろう.海外の先進国との比較,日本の若手研究者の置かれている現状等について丁寧に説明すれば,これらの予算を減額させるのは国の将来を損なうものであることを説得することはできるだろう.国のGNPに占めるこれら削減対象の科学技術予算を他の先進国と比較して削減するのが正当なものかどうか示すべきだ.

今回の仕分けでは,特に大型の科学技術プロジェクトが狙い撃ちされている.次世代スパコンはつぶれてしまいそうだし,地球内部ダイナミクス研究は見送り又は半減,スプリング8,深海掘削(ちきゅう)等は半減あるいは1・2割減の評決結果である.ちきゅうは毎年150億必要なのにこれまでオイル高騰,予算削減でそれでなくとも本来の目的に使える時間が年7カ月程度に縮小させられてきた(残り5カ月は民間へ貸している)のに,これ以上削減されると事実上プロジェクトの運用効率は半減以下になるであろう.海洋掘削は季節もあり集中してやらねば効率は格段に落ちる.スプリング8でも事情は同じだろうと思う.地球内部ダイナミクス研究が狙い撃ちされているのも分らない.これには現在日本の若手・中堅の活動的な部分が集中しており,業績的にも費用に見合うものを残していると思う.わずか大型ダム1基の費用(それでも建設関係にとっては重要なことは分るが)で科学技術振興を振り落とすのは残念だ.

このような仕分けを華々しくすると,若い人の科学技術離れを一層促進するように思う.

「理系」内閣というのは,単に理系出身者であるというだけで,その実,何も最近の「科学技術のことを勉強していない」内閣なのだろう.