石のひとりごと

停年退職してもう12年,頭が白くなりました.

『新薬スタチンの発見』

遠藤章氏がラスカー賞を受賞した記事がきっかけで、Wikipediaに出ていた、ウオールストリートジャーナルのLandersの記事、一方の当事者のBrown & Goldsteinの専門誌Atherosclerosisの記事、遠藤氏の表題の解説本(岩波科学ライブラリー)を読んだ。コレステロール低減薬の開発の端緒を開いた著者の経過等はこの本に余さず書かれており、米国の研究者、製薬会社メルクとのやり取りの詳細もたんたんと書かれている。研究の端緒について、66-68年の米国留学では当初の目的の研究室ではなくテーマも異なるものだったが、この時の共同研究者との交流で天然物からコレステロール低減薬になる素材を探すことになった経過が書かれている。特に、米国流のやり方や中心的なやり方を外して研究者人口の少ない分野に賭けて帰国後の実験を計画したことが書かれていた。三共から途中で農工大へ転出した際の様々な摩擦、三共でも懐の広い上司を得て実験が進んだこと、等々、抑えた筆致であり一気に読ませた。