石のひとりごと

停年退職してもう12年,頭が白くなりました.

司馬遼太郎記念学術講演会

大阪のMNさんから,切符が余っているということで誘われ,大阪大学主催,産経新聞社共催の表題の講演会に行った.講演,ビブリオバトル,対談,の3つから構成されていて,特にビブリオバトルと対談が面白かった.

会場のサンケイホールブリーゼは初めてだったが,梅田から地下街を通って直接行ける.昼過ぎに着いて,NMさんと会いお昼をとる.年一回こうして顔を合わせて元気を確かめ合う機会を作ってもらえるのは有難い(お互いネットはあれこれやっているので元気であることは判るのだが,直接会って話をするのは格別).14時開演のところ40分前位に会場に行くと既に50名程度列を作っていた.

司馬遼太郎大阪外語大学を出ているが,現在は阪大と統合されて大阪大学国語学部になってる.また,最初に勤めたのが産経新聞社.1996年2月に亡くなって,1998年からこの学術講演会が始められ,今回が第20回となるとのこと.14時に始まって17時半まで途中休憩を含め3時間半.結構長丁場だったが,興味を持って聴くことができた.

全体の司会はNHK金沢の小川真由さん.
最初に阪大の西尾総長のあいさつ.ちょっとふれられたのだが,司馬には「学生時代の渡しの読書」というのがあるらしい.今回はデジタル世代におくる司馬遼太郎,というテーマ.

最初の講演は明治大教授の鹿島茂さんの「家族類型で読み解く司馬遼太郎」.縦軸に親子関係の強弱をとり,横軸に兄弟関係の平等・不平等をとって家族を4種の類型に分けて,日本は従来親子関係が強く,兄弟不平等が強い直系家族の範疇に入るという話.直系家族では長男の嫁さんが統治する場合が多い.日本の中でも,南海道と関東武士では異なるという話があった.それで,という感じはするのだが.

ビブリオバトルは,12名の予選会をくぐり抜けた5名の阪大生が,それぞれ司馬遼太郎の作品の中で気に入ったものを5分で紹介,2分間,別の阪大生からの質問に答える,という内容で,最後に聴衆が一番読む気にさせられた発表者(作品)を投票してチャンプ本,準チャンプ本を選ぶという企画.

最初の吉沢君は「峠」.長岡藩家老の河井継之助の物語.最後は戊辰戦争で負けてしまうが,陽明学,行動主義を信奉して強い個性を持って生きた人間,幕末史としても面白いとのこと.2番目の稲田さん,徹夜明けとのことだが元気に「俄ー浪速遊興伝」を紹介.幕末のやくざの話だが,15歳位で賭博の場で博徒を抑える力等.3番目は向井さん「関ヶ原」登場人物が多く,今年映画化されるとのこと.光成等を通して正義とは何かを考えさせる,とのこと.質問に5回読んだとの答え.4番目は北田君「燃えよ剣新撰組の中での土方歳三の役回りと,オリジナルキャラクターの存在が面白いとのこと.最後の西畑君「空海の風景」西畑君自身がモンゴル語を専攻して司馬の直系後輩とのこと.司馬によると空海は,民族,国境を越えた人物.同時期に執筆されていた「坂の上の雲」の内容とは相補的で,現実の毎日の取り組みに悩みながら,時に大きな全体を見る必要をこの本を読んで振り返れる処が良いとのこと.全員,持ち時間5分ぴったりで上手にプレゼンをして,質問にも適切に返答がされていて若い人の新鮮な発表を聞けて良かった.*

休み時間の後,石野伸子産経新聞編集委員の司会で,鹿島茂さんと,落語家の桂南光さんの対談.桂さんがいきなり自己紹介を兼ねて話し出したら,「俄」が好きで,師匠の枝雀の師匠,米朝さんの落語を司馬さんが寝る時に聴いていた話など,止まらない.鹿島さんもあおられて結構話され,面白かった.笑を取るのに,自虐ねたとけなしネタ.けなすときは医者と坊主.枝雀が始めていた英語落語では,米国人の笑のツボは日本人と異なることなど.デジタル世界でも学び方を学ぶのはアナログでそれが重要なことなど.

最後にビブリオバトルの投票結果.やはり発表が面白くインパクトの強かった人が選ばれていた.チャンプ本は「空海の風景」,準チャンプ本は「俄」.最後に阪大外国語学部+大阪外大同窓会の咲耶会会長の正徳会長から挨拶があってお開きに.結構楽しめた.

講演会のパンフレット.右下をクリックすると拡大します.
イメージ 1

* 私は最初の「峠」に興味を持って,帰りに本屋で1巻を入手して読んでいるが面白い.